アジア新興国不動産が中長期では熱い!
日本大学経済学部が作成した報告書に面白いものがありました。それは、「アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システムの実態把握に関する調査検討業務」報告書 というもので、恐らく国土交通省の委託を受けて調査した結果の報告書と思われます。内容は、世界経済の成長センターであるアジアに関し、不動産経済にフォーカスをあて、その市場動向や、各国の制度を調査比較したものです。
その報告書の中で、Fiorilla, P., Kapas, M. and Liang, Youguo.(2012)”An Institutional View of Global Real Estate Markets”, Journal of Real Estate Portfolio Management,18:1,pp123-133 を引用して、面白い結論を示しています。下に、そのまま「 」で引用します。
「2011 年時点で高グレード商業不動産の 25.4%はアメリカに集中し、日本も加えると35.5%となっている。上位 5 位までで53.8%を占めるに至っている。また中国を除けば上位5 位は全てが先進国で占められている。」
このような状況が今後どのように変化するかについては、次のような内容となっています。
「アジア太平洋地域の資産価値の向上が続くことが予想され る。発展途上アジア太平洋地域の高グレード商業不動産資産は毎年 17.1%成長することが 見込まれており、2011 年には 26 億ドルだったのが 2021 年には 128 億ドルになるものと考えられている。一方先進アジア太平洋地域は、年 3.3%の成長で、2011 年に 45 億ドル だったものが、2021 年には 63 億ドルになるにすぎない。
これらの成長率は他の地域と比較して高く、不動産市場としてもアジア太平洋地域は新興国を中心に高い成長をとげることが予想されている。これは現在ではまだアジア太平洋地域の新興国では 1 人当たりGDPが低く、なかなかアクセスできない高グレード商業不動産、例えばショッピングモール、オフィスビルなどに手が届くようになるために、このような高い不動産市場の拡大が予想されている。」
つまり、現在においては、1位「米国・カナダ」、2位「ヨーロッパ」、3位「先進アジア太平洋」に大きく水をあけられている「発展途上アジア太平洋」が、2021年には、「米国・カナダ」を抜いて1位に躍り出て、2031年には2位の「米国・カナダ」の2倍近くのシェアを占めるまで成長すると予想されているのです。
もちろん、これは価格水準のことを言っているのでなく、あくまで、全体の規模のことを予想しているのですが、当然、これだけ目覚ましく成長していく不動産マーケットであれば、価格水準もその成長に見合って上昇することは間違いありません。国、地域によっては、既に不動産価格が上がりすぎたと言う議論もありますが、これからも継続する高い経済成長を中長期で折り込んでみた時には異なる議論になりそうです。
思うに、昨年、今年、そして当面しばらくは、世界経済の牽引役は、それまでの新興国から、米国や日本、欧州などの先進国にバトンタッチされたと言われていますが、より長いスパンで考えた時には、ここで言うところの「発展途上アジア太平洋」は、投資を考えた時に、はずせない対象地域となるはずです。
短期的には、今の新興国経済は、脆さの方が強調されアンダーウエイトにされていますが、中長期では必ず成長することは見えていますので、高い経済成長に伴っての不動産市場の力強い成長が約束されていると言っても過言ではないと思っています。
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