中古住宅の建物評価手法の改善施策で取引価格が上がる?

3月31日、国土交通省は「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を公表しました。同省では、学識経験者や実務者からなる「中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方検討委員会」を設置し、中古戸建て住宅の評価手法の改善に向けた検討を進めてきましたが、その結果をまとめたものが今回の指針です。同指針は、概ね次のような趣旨でまとめられていますが、専ら、中古の木造戸建住宅に適用される指針です。

「良質な維持管理やリフォームが行われている住宅が適切に評価されるよう、
・住宅を基礎・躯体と内外装・設備に大きく分類し、基礎・躯体については、性能に応じて、20 年より長い耐用年数を設定し、例えば長期優良住宅であれば100年超の耐用年数とすることを許容する
・基礎・躯体部分の機能が維持されている限り、リフォームを行った場合は住宅の価値が回復・向上するととらえて評価に反映する
こと等を評価の改善の基本的な考え方として示しています。」

要は、諸外国では、戸建住宅の築年数が相当古くなっても価格が維持され、それゆえ中古戸建住宅の売買マーケットの市場規模も大きいのに対し、日本では、金融機関を始めとして築20年程度を経た戸建住宅の建物価格はゼロとしてしまうことから、これが成り立たない。価格が維持されないので、リフォームマーケットも盛り上がらないということが、この指針が出てくる背景となっているようです。

細かい評価方法は、今後、不動産鑑定士の鑑定評価基準の実務指針等に盛り込まれたり、簡易な評価方式が整備されたりすることが予定されています。
新しい評価手法に関して説明しますと、例えば、今までですと、ある設備について一定の年数が経過してしまうとその機能が十分維持されていようがいまいが価値をゼロ近くにすることが多かったのですが、この新しい指針では、機能が仮に新築時と同等に維持(回復)されていれば、価格も新築時と同等に近い価格としてよいというものです。ただし、機能が十分かどうかなどの判定は、きっちりしたインスペクション(住宅診断)を行うことが前提となっているようです。

平成26年度中に「戸建住宅価格査定マニュアル改訂版」が出てくることになっていますので、この制度は1年前後以内に適用されるのでしょう。いずれにせよ、今まで評価に折り込まれていなかった、機能が維持・回復された増価値分が、新たな手法では折り込まれるので、新手法による価格の方が従来手法による価格(つまり現在の相場)よりも高くなります。このため、当面は新手法による価格は「参考価格」の位置づけとなります。

そこで、今回公表された資料をよく読むと、面白いモデルケースが記載されていました。以下に紹介します。
売主側宅建業者:従来の相場では1,500万円ですが、建物評価の指針に基づいて算出した参考価格は2,400万円と出ています。
売主:参考価格が2,400万円と出たので、相場より高いけど、2,200万円で売り出そう。
買主側宅建業者:売出価格は、2,200万円ですが、参考価格では2,400万円の価値がある物件です。
買主:予算は2,000万円なので、より高い参考価格が付いている2,400万円の物件を2,000万円で買おう。
以上です。つまり、従来相場が1,500万円のところ、どうも2,000万円から2,200万円の間で売買が成立しそうです。

こんなやりとりが成立するとはとても思えません! と思ったのは私だけでしょうか?(笑い)

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