不動産私募ファンドの市場規模は半年で6千億円減少

三井住友トラスト基礎研究所が3月31日に発表したレポートによりますと、2013年12月末時点での不動産私募ファンドの運用資産額は16.1兆円となり、半年で約6,000億円減少しました。率にして3.7%の減少です。減少の要因は、不動産市況が好調な中、J-REIT等へ物件売却を行った結果であると同研究所では分析しています。ちなみに、J-REITの市場規模は、2013年12月末時点で11.2兆円、半年前比で7.7%増です。
このことは何を意味するのでしょうか? 3月発表の地価公示でも明らかになったように、遅行性があるといわれる政府発表の公定価格でも都心商業地の地価上昇は明らかになっています。そうした中で、私募ファンドは、今が売り時として売却を積極的に進めた一方、物件取得については、価格の上昇により目線が合わず、あるいは入札における取得競争が激しかったため取得額が売却額を上回らなかったということでしょう。

売却先の多くがJ-REITというのも、J-REIT投資者には微妙ですね。不動産価格の上昇は、J-REITのNAV(ネットアセットバリュー、純資産のようなものです)を高める点ではポジティブに働きますが、外部成長を促進するための物件の仕込みという視点からはネガティブとなります。もし私募ファンドから高い価格で買ってしまっていると今後のしこりともなります。
また、不動産価格が継続的に上昇する時の経済状況を考えますと、タイムラグはあるにしても通常は金利の上昇が伴うのが通常です。J-REITの投資妙味は、イールドギャップ(=配当利回りマイナス市場金利)でグローバルに比較されますが、金利の上昇はこのイールドギャップを低下させるため投資資金流入という点で不利に働きます。
よって、今後のJ-REITの価格動向には十分注意する必要がありましょう。

全く別の視点の話になりますが、同レポートによりますと、海外投資家が日本に投資する理由のベスト5は次の通りでした。
1. 不動産市場の規模が大きい
2. グローバルポートフォリオの中でアロケーションしたい
3. イールドギャップにより相対的に魅力が高い
4. インカムの安定性が高い
5. 政治的・経済的な安定性が高い

一方で、海外投資家が日本に投資しない理由のベスト5は次のようになりました。
1. GDP、消費、人口等の成長が見られない
2. インカムの成長性が低い
3. 地震リスクがある
4. 魅力ある投資機会が発生していない
5. 不動産市場の透明性が低い

これを見る限り、投資する理由としては、すぐに環境が変わってしまうかもしれないが現時点では有利という項目と、規模や安定性などの静態的かつ保守的な項目が多いのに対し、投資しない理由としては、成長性がないという中長期のどうしようもない点が強調されています。今だから言えますが、以前、日本の不動産マーケットが海外と比べ魅力的な理由をあげて海外投資家にアピールしようとした時に、やはり規模や政治経済の安定性からグローバルポートフォリオになくてはならない存在という点と、リーマンショック後相当賃料も価格も下がっているので今が買い時という点しか有力な材料があげられなかったということがありました。一方で、中長期のネガティブ要因としては、上記の投資しない理由にあがっているようなより重い内容が多く、困ったことがありました。最終的には、日本全体は問題かもしれないが、東京は2025年時点でも世界一のGDPをあげるグローバル都市(ある外資系コンサルファームの予測)なので、今後も有力な投資先であるということでまとめましたが。ちなみに、アベノミクスが始まる前の話です。

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