容積率緩和施策の不動産価格への影響

今朝の日経新聞で、国土交通省が、住居併設の病院・介護施設の新設・建替えを進めるべく来年中にそれら施設にかかる容積率の緩和を行う予定である旨の報道がありました。高齢化が進む中で、住居近接の施設を増やすことや、老朽化した施設の建替え促進などの観点から望ましい施策であると思います。
また、上記とは別に、国家戦略特区においても容積率緩和が目玉施策の一つとして予定されています。

では、これら容積率緩和施策は、不動産の価格にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
あるアナリストは、当該エリアの不動産価格の上昇につながると主張し、あるエコノミストは、容積率が緩和された分、供給が増えるだけであり需要が同じである限り価格は下落すると主張します。

私は、この種の議論をするときには、ポイントが二つあると思います。一つは、何の価格について議論しているのか? もう一つは、時間軸を短期、長期のいずれにおいているのか? ということです。
土地建物総合の価格であれば、少なくとも容積率アップにより建物の分量が増えることにより物的価値はあがるので価格は一般的には上昇します。そうでないと供給がなされません。よって、通常は、建物単位面積当たりの不動産(土地+建物合計)の価格、あるいは単位面積当たりの土地の価格を議論しているはずです。
前者は、物件の需給関係中心で決まるでしょう。後者は、単位土地当たりの建築ボリュームと出来上がり物件の需給関係とのバランスで決まるでしょう。ですので、もし議論になるとすれば、一般的には、単位面積当たりの土地価格を議論しているのだと考えるのが妥当だと思われます。

私自身の考えは次の通りです。
まず、容積率緩和により、単位土地の上に建てることができる建物ボリュームが増えることから、少なくとも短期的には単位土地が稼ぐ収益が増加する訳ですから、間違いなく短期的に価格は上昇します。では、中長期の視点ではでどうでしょうか? 中長期では建物供給が増えることにより需給バランスが緩むでしょうか? それは、その物件が取り引きされる需給圏をどう見るかによると思います。概して、そのような立地にある土地上の物件は、近辺の同様に容積率が緩和されたエリアに立地する物件の需要を食うというより、それ以外の見劣りするエリアの物件の需要を浸食することが多いと言えます。よって、中長期的にも、供給増により価格が下落するほどの調整は行われないものと考えます。ただし、上述の通り、見劣りする物件との二極化が進むことは予想されます。

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