不動産の投資利回り低下が著しい

不動産の投資利回りの低下が顕著でかつ継続しているようです。

今日は、2つの調査からご紹介しましょう。
まず一つは、私が昨年まで在籍していた外資系不動産サービス会社CBREによる不動産投資家調査です。
7月時点のアンケート調査で、結果は8月20日に公表されています。

この調査によりますと、東京主要部に所在する優良物件に対するプロ投資家の平均期待利回りは、全セクター(オフィス、住宅、倉庫、商業)で前期(3ヶ月前)と比べ低下しています。
銀座中央通りの商業物件の平均期待利回りは、前期比で0.2%ポイント低下し4.15%となりました。
また、大手町に所在するAクラスオフィスビルの平均期待利回りは、4.1%まで低下し、ミニバブル時の最低利回りを付けた2007年後半の水準まであと0.2%ポイントまで迫っています。
東京城南・城西エリアのファミリーマンションにいたっては、既にミニバブル時の最低水準まで低下しました。
これらは、プロ投資家による大型優良物件への投資の状況です。(以上、シビーアールイー「不動産投資家調査」より)

一方で、個人投資家を中心とする小型の物件に関しては、「不動産投資と収益検索の情報サイト 健美家」が3ヶ月毎に調査を行っています。
2014年7-9月期の調査結果が、10月3日に発表されています。

この調査によりますと、全タイプ(区分マンション、1棟アパート、1棟マンション、1棟ビル)で投資利回りは前期比低下しました。
区分マンションは、8.3%で2005年の調査開始以来の最低水準となった模様です。
1棟アパートは、8期連続で低下し9.28%となりました。1棟マンションも低下傾向が継続、投資利回りは7.88%と2006年4-6月期以来の低水準となっています。
1棟ビルも低下傾向が続いており、これも2005年の調査開始以来の最低水準となりました。(以上、「不動産投資と収益検索の情報サイト 健美家」より)

もちろん、リスクフリーレート(国債利回り)は当時と比べ1%から1.5%程度低下していますし、同様に調達金利も下がっていますので、そのことだけで投資利回りが下がっても一見不思議はありません。

とは言え、それらも含めて利回りはもっと長期スパンで考えるべきものと思います。
理論的には、「還元利回り=リスクフリーレート+不動産投資のリスクプレミアムーNOI成長率」であることは百も承知ですが、リスクフリーレートの算出期間などをどう考えるかについては議論の余地があると考えます。
例えば、一日の金融マーケットで国債利回りが仮に0.3%動いたとしても、その分をそのままスライドして還元利回りを算出しそれに基づき不動産価格を算出し、価格が上がった下がったと云々することが妥当であるとは思えません。左記は、極端なケースではありますが、不動産は、金融商品そのものとは違い、実物資産として長期に収益を生み出すことに立ち戻るべきでしょう。

そのように長いスパンで考えてみると、もう少し利回りが下がることはあっても、そろそろ警戒域に来たと見る方がいいかもしれません。

もちろん、マーケットは人気投票なので、皆がまだまだ下がると思えば利回りも下がります。
ただし、下がりすぎた場合には、後で振り返った時に始めてバブルあるいはミニバブルであったと判明するのです。

今次の上昇局面では、東京オリンピックも控え、カジノ建設も視野に入ってきていますので、期待感から利回りも価格も少しオーバーシュートすることはあると思います。
但し、日本経済も世界経済も脆弱さは否めませんので、ミニバブルやバブルの時のように、勢いよく上がっていき、その後は深い後退に陥るというような事態になる可能性は低いと思います。

結論としては、今後の大幅な価格上昇を見込んで、あまりにも低い利回りで買いに入るのは得策ではないということになります。

個人投資家は、自分が投資する目的、極めたい目標を見失わず、負債がある場合は、借入金の元利返済後のキャッシュフローを十分吟味して、投資の是非を判断しましょう。

 

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