東京のオフィスマーケットは活況なのか?

東京のオフィス空室率が改善を続けているとか、賃料が上昇してきたなどの明るい情報がある一方で、企業のオフィススペースへの需要は弱いなどの意見もあります。果たして、東京のオフィスマーケットはどう見通せば良いのでしょうか?

まずは、各社の基本データをチェックしてみましょう。

【空室率 6月末】
CBRE
東京23区オールグレード(延床面積1000坪以上) 4.8% 、 東京グレードA(延床面積1万坪以上) 4.8%、4年9ヶ月ぶりに5%を下回る

三幸エステート
東京23区大規模ビル(基準階面積200坪以上) 4.9% 、都心5区大規模ビル 4.49%、4.5%を下回るのは2009年5月以来

三鬼商事
都心5区(基準階面積100坪以上) 6.45%、12ヶ月連続低下

【賃料 6月期】
CBRE
想定成約賃料:グレードA 前期比2.8%上昇と2007年第3四半期以来の高い伸び

三幸エステート
募集賃料:都心5区大規模ビル 3ヶ月連続で上昇

三鬼商事
募集賃料:都心5区 6ヶ月連続で上昇

いかがですか? 空室率は大幅に改善を続けています。三鬼商事を除けば、軒並み5%を切っています。5%の空室率は、失業率で言えば自然失業率に該当するもので、業界では自然空室率と呼ばれることもあります。それだけ需給が締まってきているのです。平均で5%を切っていますから、人気のあるエリアや人気のある物件では、空室在庫がないという状況も発生しているのです。三鬼商事にしても、空室率は6.45%と他社より高いですが、順調に改善を続けています。ここで気をつけなければいけないのは、各社のデータ収集の対象範囲が異なるということです。三鬼商事は、3社の中では、対象とするビルの最小規模が最も小さくなっています。つまり、スペックや立地で劣るビルが相対的に多く含まれているとみることができるのです。ですので、空室率が高く出るのは当たり前です。日経新聞には三鬼商事のデータが載ることが多いので、この社の数字だけを見ていると、マーケットを読み間違えるかもしれません。

賃料については、各社とも上昇を示していますが、その伸び率は小さく緩やかな上昇にとどまっています。これを受けて、需要が乏しいと判断する人もいるようです。

ちなみに、最近ある経済新聞に載ったアナリストのコメントに「懸念材料はオフィス市況の低迷だ。都内の大規模オフィス供給量は2014年に前年比で5割近く伸びる。一方、正社員の採用は大きく増えておらず、オフィス需要の拡大は見込みづらい。平均賃料は都心部で底入れしたが、一段の改善は難しいだろう。」というのがありました。全く間違いというわけではないですが、正社員の採用だけでオフィス需要が決まるわけではありませんし、どのエリアのどの規模のオフィスのことを述べているかでも大きく事情は違ってきます。上記は、J-REITに関連してのコメントですので、先の仲介各社のデータで言えば、大規模ビルやグレードAビルを想定して議論すべきです。

私としては、東京23区全体(大規模も中小規模も含めた全体)の平均賃料が改善することは確かに難しいと思いますが、大規模ビル、グレードAビルの賃料は既に上昇してきていますし、今後も、「緩やかな」という前提付きで上昇はすると見ています。2014年の新規供給は、十分吸収が可能なレベルと見ます。もちろん、昨年よりは大幅に増えますので、供給の少なかった昨年のような形で空室率が継続的に改善するという形にはならないでしょうが、市況の悪化というレベルには至らないはずです。

J-REITに関しては、これまでの価格の上昇が、賃料のあまりに大幅な上昇を期待してのことであったならば、その反動が出るでしょうが、そうでなければ、不動産のファンダメンタルズからは暗く考える必要はないと思います。もっとも、ミクロの不動産マーケットに疎い投資家が、全般的な平均賃料の上昇が見られないからとして、弱気になることは考えられます。
また、J-REITはイールドスプレッドからみて、割安感がなくなってきたのは事実です。
年内中の標準シナリオとしては、割安感の薄れから、足元、少し足踏みしながらも、不動産ファンダメンタルズの改善に基づき徐々に値を上げるというところではないでしょうか。

ちなみに、地政学的リスクや、米国株の低迷など、リスク資産のマーケットに共通して影響があるネガティブな状況が発生した場合には、J-REITも例外ではなくなります。もっとも、それは、不動産のファンダメンタルズを理由にするものではないのです。

最後に、三井住友トラスト基礎研究所の最新不動産マーケットリサーチレポート(7月23日プレスリリース資料より)から、結論部分を抜粋しご紹介します。「日本の不動産市場は、金融政策に依拠した不動産価格上昇という第1ステージを終え、賃料上昇を伴い不動産価格が上昇する第2ステージに入った。当面、不動産価格は上昇を続けると予想されるが、2016年以降に想定される金利上昇局面においては、タイプごとのNOIの成長性の違いにより、価格動向に差異が生じる可能性がある。」
私も概ね同様の見解であるが、最後の行については、タイプにかかわらず、2015年、2016年のいずれかで不動産価格は一旦ピークを打つ、と思っています。

 

 

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