平成26年地価公示から見えてくるもの

昨日3月18日に、平成26年地価公示の結果が国土交通省から発表されました。
東京、大阪、名古屋の3大都市圏の商業地の地価(平均)については、全ての圏域で、昨年の前年比マイナス(下落)からプラス(上昇)に転じています。住宅地は、大阪圏のみ-0.1%とマイナスとなりましたが、東京圏、名古屋圏ではプラスとなっています。
その他地方(平均)では、住宅地、商業地とも、いまだ下落を続けていますがマイナス幅は縮小しています。

全般的には、住宅地においては、低金利や住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支えや景況感の改善による住宅需要拡大等もあって、都道府県全てで下落率縮小や上昇への転換等が継続して見られており、特に利便性、住環境等に優る住宅地では上昇基調が顕著となった、と国土交通省では分析しています。

商業地についても、低金利、景況感の改善を背景に都道府県全てで下落率縮小や上昇への転換等が継続して見られています。また、堅調な住宅需要を背景に商業地をマンション用地として利用するいわゆるコンバージョン的な動きが全国的に見られ、これが地価が上昇または縮小となった要因の一つになっている、と同省では分析しています。3大都市圏を中心に地価が上昇した都府県が見られますが、主要都市の中心部に関して言えば、店舗については消費動向の回復、オフィスについては空室率の改善により投資用不動産等への需要が回復していること、BCP(事業継続計画)の観点から耐震性に優れる新築・大規模オフィスへの移転の動きが見られるなど、高度商業地や再開発等の進む地域で上昇基調が強まっている、と分析されています。

国土交通省のレポートの文章(上記がその概略)だけを読んでいますと、全国的にかつ全般的にバラ色のような感じがしますが、実際には、次のような、地方と大都市圏主要都市中心部の二極化、好立地とそうでない立地の二極化の傾向が鮮明に出ていると思います。

1. 3大都市圏を除いて、地方では、プラスに転じそうな気配が全くない(復興需要の宮城・福島、観光で潤う沖縄は別)

2. 地方の地価の上昇ないし下落幅縮小の要因に、商業地の住宅利用があげられているのが地方が商業で全く潤っていない証拠

3. 東京都心の中心商業地は、下記4のような特殊要因なく10%近くの上昇を示している

4. 個別地点で大きく地価が上昇している要因は主に次の3つの特殊要因
・大型開発に伴うもの
大阪のアベノハルカス、グランフロント、名古屋名駅の大型複合ビル開発、川崎のラゾーナ店舗入れ替え・改装と東芝のオフィスビル開業 等
・新線開業に伴うもの
仙台市営地下鉄東西線の新駅開業予定による新駅近接の地価上昇、東急東横線と東京メトロ副都心線の相互乗り入れによる新宿3丁目付近の地価上昇、北陸新幹線開業予定による金沢駅周辺の商業地の地価上昇 等
東京オリンピックによるインフラ整備・開発期待によるもの
オリンピック施設至近の立地としてマンション需要が強い月島・豊洲・勝ちどきエリアの地価上昇

この他、伊勢神宮参拝客増加による伊勢市の地価上昇や内外の観光客が急増する京阪祇園四条駅近辺の商業地地価上昇などの観光需要、震災の復興需要も要因としてあげられますが、マイナーなので主要な要因としては上記3つとしました。

平均を超えて地価が上昇する地点には、概ね上記4のような要因が認められますが、ここで重要なのは、その要因に対する評価が実需に見合っているかどうかということです。例えば、ある一期間だけの需要増に反応して地価が上昇している場合は、その期間が終了すれば反動が表れるかもしれません。これは、上の例で言いますと、伊勢やオリンピックなどが検証対象となりましょう。また、新線効果などは、既に開通して実際の乗降客の増加やそれに伴う消費増などが表れていれば問題ありませんが、将来の開通を見越しての現在の期待値が、高くなりすぎていないかどうかを考慮する必要があります。上の例で言えば、金沢や仙台が対象となりえましょう。

今回発表された3大都市圏の商業地の地価の上昇率をみますと、丁度、先のミニバブルの入り口である2006年を少し上回る程度となっています。ミニバブル時には、翌年東京圏商業地の平均で9.4%の上昇を示しましたが今年はどうなるでしょうか? 当時と今で異なるのは、当時は、世界経済、日本経済ともまだ今年のような地政学的リスクや金融政策や経済の先行き不安がなかったということでしょうか。消費増税もありませんでした。これらの事情が、逆に、今後不動産価格がすぐにバブルとならず徐々に長く成長していける要因となればいいのですが。

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