ややこしすぎる不動産の価格の種類、一物何価?

経済学における概念で、一物一価の法則と呼ばれるものがあります。「自由な市場経済において同一の市場の同一時点における同一の商品は同一の価格である」という法則です。つまり、上記の前提では、一つの物には一つの価格しか存在しないということです。

しかしながら、不動産の世界ではこれが成り立ちません。なぜなら、不動産の取引は、自由な市場経済で行われてはいますが、対象となる物件に強い個別性があり全く同じ物は存在しないこと、相対取引となること、取引当事者が取引価格を公開したがらないことなどから、価格の透明性に乏しいからです。これに、税務などの諸事情が加わり、不動産の価格を非常にわかりにくいものにしています。

例えば、不動産の価格については、一物一価ではなく、一物四価とも一物五価とも言われています。
具体的には、次のようなものがあります。

・国や都道府県が公表する「公示価格」や「標準価格」
(基本、公表主体と公表時期、算定対象となるポイントが異なるだけで、内容は同じと考えてよい)
・相続税評価額を算定するための「相続税路線価」
・固定資産税評価額を算定するための「固定資産税路線価」あるいは「固定資産税評価額」そのもの
・不動産鑑定士が評価した「鑑定評価額」
・実際に取引された価格である「取引価格」あるいはそれらから導かれる相場である「実勢価格」

どうでしょう? 一杯ありすぎて面倒くさいですよね。
ではありますが、実は、一杯あるだけに相場を把握するために役立つことは確かです。例えば、これらのうち、国や都道府県が公表している価格には、それらの間の価格水準の関係に次のような目安があります。

・相続税路線価 = 公示価格(標準価格) × 80%
・固定資産税路線価 = 公示価格(標準価格) × 70%

ですので、相続税路線価や固定資産税路線価がわかれば、上記式から公示価格(標準価格)ベースの暫定価格を算出することは非常に簡単なのです。ある程度、これで相場の把握は出来ると言えます。
しかしながら、公示価格(標準価格) = 鑑定評価額 = 実勢価格 が成り立つかどうかは、その時々の金融経済環境、不動産の需給、投資環境、不動産価格のトレンドなどにより、微妙です。

最終の価格判断は、専門知識・スキルやマーケット観を持った人間にしかわからない世界となります。また、その判断が本当に正しいのかどうかは誰にもわからない回答のない世界と言えるでしょう。

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