これまたややこしい不動産の利回り

不動産の価格が一物一価でなく、一物四価とも五価とも言われているということを前回のブログで書きましたが、不動産の利回りについても同様のことが言えます。不動産投資で、「この物件は利回り何%」などの言葉が出てきた場合は、どの定義で使っているのかをよく把握していないと大変なことになります。

ではここで、不動産の利回りにはどのようなものがあるかを見てみましょう。

1. 表面利回り(粗利回り、グロス利回り)
賃料等の年間総収入 ÷ 不動産価格 %
ここでいう総収入は諸経費を控除する前の収入ですので、この「表面利回り」は他の種類の利回りと比べて最も高く出ます。一般の人にもわかりやすいことから、実際の投資売買取引でよく使われます。

2. ネット利回り(実質利回り、キャップレート(還元利回り))
年間純収益(年間総収入ー諸経費等) ÷ 不動産価格 %
年間純収益とは、上記1で使っている年間総収入から、物件の維持管理に必要な諸経費等(税金、維持管理比、修繕費、仲介手数料、水道光熱費等)を差し引いたものを言います。通常、減価償却費と借入金利は、「諸経費等」の控除項目に含めません。
 また、総収入から控除する「諸経費等」に、大規模修繕等の資本的支出(支出額を支出年度の費用に一括計上せず、一旦固定資産に計上し減価償却の形で費用化する支出)を含めるか含めないかで、純収益の額が変わってきますので、この違いも理解をややこしくする一因となっています。大規模修繕等の資本的支出を諸経費等に含める場合の純収益をNCF(Net Cash Flow)、含めない場合の純収益をNOI(Net Operation Income)と言います。当然、NCFの方が額が小さくなります。
プロの投資家がよく使う指標です。

3. IRR(Internal Rate of Return)
不動産価格 = 1年目の純収益÷(1+IRR) + 2年目の純収益÷(1+IRR)2 + ・・・ + n年目の純収益÷(1+IRR)n + n年後の不動産の予想処分価格÷(1+IRR)n   *nは投資の年数
上記の算式を成り立たす数値をIRR(%)と言います。つまり、不動産の投資額(取得価格)と、将来その不動産が産み出す年々のキャッシュフロー(賃貸や売却による)の現在価値が等しくなる収益率をIRRと言うのです。不動産のみならずプロジェクトの投資採算性を検証するときによく使われる指標です。

以上が代表的な不動産の利回りの種類ですが、これだけでもややこしいのに、更にややこしいのが、上記の利回りの全てについて、次にあげる区分の違いでまた数字が違ってくるということです。
「不動産価格」に不動産取得にかかる税金や仲介手数料等を含めるかどうか、「総収入」や「純収益」は、現在満室でなくても満室を前提としたものなのか、現在の実績そのものに基づくものなのか、あるいは何らかの根拠で予想したものなのか、などです。

不動産の価格を算定する場合には、5%の利回りが6%になるだけで、他の条件が同じだとすれば、不動産の価格が約17%下がります。そして、上記の利回りの種類の違いにより、1%ポイントの数字の違いなどは容易に出てくるのです。
冒頭に記載したように、この言葉を使っている人が、どの意味で使っているのかをよくよく把握して対応することが重要です。

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