J-REITがミドルリスク・ミドルリターンというのは嘘っぱち？

• J-REITは実はハイリスク・ハイリターン！

一般に、J-REITのリスク・リターン特性は、株式と債券の中間にありミドルリスク・ミドルリターンと言われるのが通常です。 しかしながら、データを見る限りそうとは言えない事実が浮かび上がります。
例えば、野村アセットマネジメントFunds-iがそのホームページ上で公開しているグラフによりますと、J-REITのリターンは約10.5%、リスクは約20.5%であるのに対し、国内株式は、日経225でリターン約8.5%、リスク約19.5%、TOPIXでリターン約6%、リスク約18%となっています（期間2003/4〜2014/9における月次データ、年率）。
明らかに、J-REITの方がリスク（ボラティリティ、価格変動性）が高いのです。
ニッセイ基礎研究所の最新のレポートでも、直近12年間（2003/4〜2015/3）で、J-REITのリスクは23.2%となっており国内株式の22.1%を上回っています。
データを見る限り、J-REITはハイリスクハイリターンと言った方が適切なのです。

• なぜリスク（ボラティリティ）が高いのか？

J-REITのリスク（ボラティリティ）が高くなった原因に当たる事実としては、過去に外的ショック（例えば、ミニバブル生成と崩壊、東日本大震災、日銀異次元緩和）が発生した時に、マーケットが過敏に反応したことがあげられるでしょう。
ミニバブルの発生時には、J-REITは実物不動産の価格上昇を大きく上回って上昇しましたし、その崩壊時には実物不動産の価格下落に加えてREITの破綻や救済合併あるいはそれへの懸念などで実態以上に心理面で萎縮しました。
また、国内株式に比べ流動性がないこともこれに拍車をかけたものと思われます。
大震災時には、物件への物理的な影響が懸念され予定されていた売買取引が延期されたり、都心からの企業の脱出騒ぎなどで賃貸需給面での不安も喧伝されました。
日銀異次元緩和導入時には、インフレ対応資産、金利低下により恩恵を受ける資産として、導入発表前までにいち早く価格が大きく上昇しましたが、導入後にはその反動もあり大幅に下落しました。
これらは、もしかしたら、J-REITの不動産ポートフォリオなり個別物件をよく理解せず、付和雷同的に動く投資家が多いことの裏返しかもしれません。

・J-REITには投資すべき？

つまり、J-REITは実物資産を裏付けに持ち強固なキャッシュフローが得られるので、安定した収益特性を持つというJ-REIT設立以来のセールス話法とは裏腹に、全く異なるデータが存在するのです。

では、J-REITには投資すべきでないのかと言うと、それは全く話が違ってきます。
上述のリスク・リターン特性を理解した上で、他の金融資産や実物不動産と比べて、選別すればいいのです。
J-REITは、実物不動産よりも相当にボラティリティが高く、上記の通り国内株式をも上回っています。逆に言えば、アップサイドではこれらの資産よりも大きく儲けることが可能なのです。
上手く上昇気流の波に乗り下落が進む前に売り切る自信があるか、バイアンドホールドで長期に保有し大きなマーケットサイクルの中で売却タイミングを見極めることができる人なら投資すればいいのです。

・J-REIT当面の危険水域は？

今後当面の注意点としては、やはり、伝統的なREITの投資判断指標であるNAV（ネットアセットバリュー）倍率、イールドスプレッド（分配金利回り−国債利回り）の水準をウォッチし、危険水域近辺で売却を考慮ということかと考えます。

当面の危険水域は、NAV倍率で1.7倍程度（現在1.5倍台）、イールドスプレッドで2.5%程度（現在2.7%台）と予想します（J-REIT平均で）。

特に、イールドスプレッドは、国債利回りの変動だけで大きく変わりますので、米国の利上げの動向（日本国債の利回りも上昇）は常に警戒しておく必要があり、現時点では、この金利上昇が最大のリスクで狼狽売りが出る可能性が高いと言えるでしょう。

（本ブログは、2015.05.12午前に発行された弊社メールマガジンの一部と同一の内容です）

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