外国人投資家が買い続ける日本の不動産と超二極分化の未来

下記ブログは、2025年9月10日 当社メールマガジンにて発信したものです。


世界的に広まっている政治や社会の分断と同様に、日本の不動産においても分断は更に進み、価格の形成のされ方も、これまでとは全く違った形になるのではないかという問題意識を持っています。今回のブログは、不完全ながらその思考の途中過程のまとめとなります。
末尾でご紹介しているフォーラムの中で、皆様からのご意見、ご主張、ご感想などを伺えれば嬉しいです。


なぜ今、日本の不動産が世界から注目されているのか

ここ数年、日本の不動産市場に対する海外投資家の注目は一段と高まっています。特に円安が進行した2022年以降、その動きは顕著になりました。
ドルを持つ投資家から見れば、2020年当時と比べ、日本の不動産は為替の影響で「実質3割引」に見えるのです。
一方、日本国内では「不動産価格が上がって高すぎる」と感じる人が多いのも事実です。このギャップこそ、現在の不動産市場を語るうえで重要な視点といえます。

世界主要都市と比べても「日本はまだ安い」

実際の数字で比較すると、日本の不動産の割安さは際立ちます。
例えば、世界の主要都市の高級マンション価格を、東京の高級マンション分譲単価と比べると、次のようになります。

• 香港:2.6倍
• ロンドン:2.1倍
• 上海:1.6倍
• 台北:1.6倍
• ニューヨーク:1.5倍
• シンガポール:1.4倍

つまり、東京の一等地にある高級マンションは、香港やロンドンの“半額以下”であり、上海・台北・ニューヨーク・シンガポールと比べても“6掛け~7掛け”で購入できる水準です。
加えて、日本は治安が良く、政治・法制度が安定しており、生活コストもドル換算で見れば比較的低水準にあります。こうした要素が組み合わさり、日本は「割安かつ安全な投資先」として世界の資本を呼び込んでいるのです。

円安による海外投資家の購買力アップと具体的な買われ方

円安局面では、海外投資家の購買力が一気に高まります。
1ドル=150円の水準であれば、ドル資産を持つ投資家にとって日本の不動産は実質3割引に見える(2020年当時の為替水準との比較)といえます。
実際に買われているのは次のような不動産です。

• 東京の都心部高級マンション
• 5大都市圏の中心部の高級マンション
• 北海道や沖縄などのリゾート物件 など

いずれも「富裕層が資産として保有したい」と考えるエリアです。観光目的の短期滞在やセカンドハウス需要もあり、投資対象というより“ライフスタイル資産”としての購入が進んでいます。

日本国内で進む「二極分化」

こうした外国人投資家の動きは、日本人にとっての不動産市場にも大きな影響を与えています。
一般層が購入する立地の比較的良い新築マンションや戸建ては、所得に対して価格が限界水準に達しつつあり、これ以上の価格上昇は難しい状況です。
一方、都心や観光都市の高級物件は、海外マネーや国内富裕層の需要により、さらに価格が押し上げられることが予想されます。

つまり日本の住宅市場は、「住むための不動産」と「投資・資産としての不動産」に分断され、それぞれの価格動向がまったく異なる方向に進んでいるのです。

円高に反転しても価格が下がらない理由

将来的に、日銀が利上げを行い、FRBが利下げをすれば、日米金利差が縮小し円高に戻る可能性があります。そこで「円高になれば、外国人は買わなくなり、価格が下がるのでは?」という疑問が生じます。
しかし、必ずしもそうはならないでしょう。その理由は次のとおりです。

• 一度外国人投資家が買い上げた水準は“新しい基準値”となり、簡単には下がらない。
• 円高になっても、国際比較では依然として割安。
• 建築費上昇が続いており、不動産価格は構造的に上昇圧力を受けている。
• 円高局面では日本人の購買競争力が相対的に改善し、国内富裕層による需要が買い支えにつながる。

このため、円高になったとしても「価格下落」ではなく、「高止まり」や「緩やかな上昇」に向かう可能性が高いと考えられます。さらに長期的には、日本の経済力や世界の中での位置付けの低下を考えると、円安方向に動くとの見方ができるのではないでしょうか。

今後5年の展望と投資家への示唆

10年先は読みにくいとしても、今後5年程度は、日本の不動産は「国際的な資産クラス」としての地位を保っていくでしょう。ただし物件の種類によって明暗が分かれます。

• 都心や観光都市の高級物件 → 外国人・富裕層の需要に支えられ上昇基調
• 一般ワーカー居住物件 → 日本人一般層の購買力に依存するため価格上昇に限界

結果として不動産市場の二極分化はさらに鮮明になります。住宅市場ではジェントリフィケーション(都市の高級化)が進み、社会の分断を引き起こす可能性もあります。
投資家にとって重要なのは、「資産価値が国際的に評価されるエリア」か「国内需要だけに依存するエリア」かを見極め、戦略を立てることです。

リスク要因

なお、本稿では世界的な経済や金融のクラッシュは考慮外としています。
トランプ関税の影響や地政学リスクなどで世界経済が大きく後退し、金融不安が顕在化すれば、全く異なる展開となる可能性がある点は留意が必要です。

まとめ

• 円安は外国人投資家にとって追い風となり、日本の不動産市場に大量の資金が流入している。
• 東京の不動産は世界主要都市と比べてもまだ割安であり、他の国内有力主要都市はさらに割安といえる。
• 円高に戻っても価格は下がらず、高止まりまたは上昇基調となる可能性が高い。
• ただし、一般層向けと富裕層・海外投資家向けで動向は二極化し、「住むための不動産」と「資産としての不動産」が分離する。
• 住宅市場ではジェントリフィケーションが進み、社会的分断が生じるリスクがある。
• 投資家は「国際的に評価されるゾーン」か「国内需要依存のゾーン」かを冷静に見極めることが重要。
• 世界的な経済や金融のクラッシュには留意が必要。


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