新築ワンルームマンションへの投資は得策なの?

新築ワンルームマンションへの投資は儲かるのでしょうか? 果たして得策と言えるのでしょうか?
結論から言いますと、それは、物件内容と投資者がその投資に何を求めるか次第です。

ただ、そう言ってしまっては身も蓋もないので、今日は、最近、新築ワンルームマンションへの投資を考え始め、勉強し物件を物色している人(Aさんとしておきます)の実例をお話しましょう。

まず、一般論として、新築のメリットは、新しいことで人気がある、最新の設備等を備えていることが多い、ローンの年限が最長になる、融資金額がでやすい(頭金が少なくてよい)、建物価格が相対的に高く減価償却費で節税メリットがでる、途中売却を考えた時に売りやすい、新しいと言う意味で設備や建物面でのトラブルが起きにくい、長期の空室保証が受けやすいなどがあげられます。
一方で、中古マンションへの投資のメリットは、利回りが高い、新築プレミアムが即座に剥げ落ちる新築物件のような価格下落が起きにくい、価格が安い、入居実績が把握できるなどがあります。
いずれにしても、ワンルームマンション自体、新築にしろ中古にしろ価格が手頃で購入後の管理も簡単なことから、不動産投資初心者がまず手始めに取り組みやすい物件のようで、巷では割合人気があるようです。

さて、一般論はそういうことなのですが、Aさんが物色中の新築ワンルームの業者資料をみせてもらいました。
表面利回りはおよそ4.4%です。借入金利は変動で2%台前半、収支的なものは当初3年間のデータが載っています。節税効果でその3年間は、固定資産税支払い前ではキャッシュフローが黒字なのですが、固定資産税を支払うと赤字になります。実は、節税効果(会社勤めで支払っている所得税の一部還付)がなければ、固定資産税を支払う前から赤字です。金利変動(上昇)がなくても赤字なのです。金利が上昇していくと大変なことになります。5年後に売却するならば、購入価格の90%相当の価格で売れなければ、借入金の残額を全額返済できません。新築マンションは誰かが住んだ瞬間に10-20%減価するのが通常ですので、5年後に90%というのはマンションが実質的に大きく値上がりしていないと実現できません。

でも、Aさんはそのあたりのことをきっちりとは把握できていないようでした。35年のローン期間が終わると、負債無しの物件が残り、以降は不動産からの年金として満額受け取れるというようなプラスイメージを強く持たれていました。
また、この物件は、ローンの全期間家賃保証がつくというのも売りです。でも、相場に応じて家賃のレベルは変動する契約になっていますし、保証する会社がゴーイングコンサーンで長期に生き残る会社かどうかも長期過ぎて誰にもわかりません。

もちろん、私はこのようなスキーム自体を否定する訳ではなく、冒頭申し上げたように、その是非は、物件内容と投資者がその投資に何を求めるか次第、という結論に変わりはありません。

ただ、初心者の方が、知識不足の中であまりにも無防備に不動産投資に参加しようとしていることには警鐘を鳴らしたいと思うのです。ロバート・キヨサキさんの「金持ち父さん、貧乏父さん」などの書籍の功績で、不動産を含めた投資に関する印象が好転したことは評価したいと思いますが、巷には良書だけでなく、不動産投資が極めて簡単なもののように極論する、あるいはマーケットサイクルのおかげで成功した再現性の薄い自己の成功体験を宣伝する類いの悪書も散見されます。

不動産投資に興味を持たれている方、特に借入を行う方は、十分、勉強・研究された上で、実践に踏み出すことを推奨します。
株や債券をやり始めようかということとは、明らかにリスクのレベルが異なるのです。


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