日本郵便のメガ物流局投資が物流REIT成長の足かせに
日本郵便が、2018年度までに約1,800億円を投じ、東京ドーム級の広さのメガ物流局を全国20カ所に新設するという記事が 4月13日の日本経済新聞に載っていました。郵便利用者にとって利便性が向上しかつこの投資のために配達料金が上がるということがなければ歓迎すべきことです。
少し視点を変えて、物流施設に投資している不動産ファンドや物流REITの今後の成長の視点で考えるとどうでしょう?
今回報道された投資額を拠点数の20で割りますと、90億円となります。日本郵便特有の機械・設備の投資額が含まれているとしても、1物件90億円という額は、投資額として巨額と言えます。物流REITとして有名な日本プロロジスリート投資法人の直近のデータでは、保有物件24件、取得総額3,595億円ですので、同法人の場合1物件当たり平均取得金額は150億円となります。また、同様に有力な物流REITであるシンガポール政府系のGLP投資法人では、保有物件44件、取得総額2,850億円、1物件当たり65億円です。投資総額からしても、1物件当たりの投資額からしても、今回の日本郵便の投資のインパクトの大きさがわかると思います。
では、この投資は、物流投資マーケットにどのような影響を及ぼすでしょうか?
まず、日本郵便の投資予定地と同一需給圏にある物流適地の地価の上昇を招く可能性が高いと言えます。
一方で、賃料については、日本郵便による使用となるため、他への影響、つまり物流施設の全般的な賃料が上昇していく動きにはつながりにくいでしょう。加えて、荷主企業は、まだまだ物流コストを単なるコストと見ているケースが多いため、このコストを切り詰めることはあっても、賃料の値上げには抵抗を示すことが多いと言えます。
では、不動産ファンドや物流REITにとってはどうでしょうか?
立地によりますが、既に保有している物件の価値が上がる可能性がありますので、いわゆるNAV(ネットアセットヴァリュー、資産価値の総額から負債を控除したもの、時価ベースの純資産のようなもの)の上昇が見込めます。これはポジティブ材料です。
一方で、外部成長の視点からは、物流適地の地価の上昇はあっても賃料は上がりにくいため、今後仕入れる物件の投資利回りの低下が見込まれます。このことは予想配当利回りの低下につなりますので、ネガティブ材料となります。これに、金利の上昇が加われば、投資口価格の大きな値崩れの原因となるでしょう。
これらのポジティブ面とネガティブ面のバランスにより投資口価格の価格動向が決まると思いますが、既に物件価格の上昇は相当程度折り込まれている可能性がありますので、今後は、どちらかというと外部成長の足かせになるというネガティブ材料の方が注目されてくる可能性が高まると考えています。
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