東京都のオフィスビル等に関するCO2排出ベンチマークって何?
東京都は、地球温暖化対策に関し、世界でも積極的かつ最先端の取り組みを行っている主要な都市の一つなのですが、これがなかなか、まだまだ世間一般には認識されていないようです。
不動産関係に関する取り組みの例としては、大規模建物所有者に対し、建物のCO2排出量に関する各種報告をさせ削減を義務化する仕組み、いわゆる「総量削減義務」が代表的なものです。CO2排出量の個別の削減率目標はケースにより様々ですが、東京都全体の平均としては、2020年までに2000年度比で17%の削減が目標とされています。
個別のビルオーナーは、計画期間内に都が定める削減量を達成できなかった場合、不足量の1.3倍を削減する義務が生じ、それも達成できない場合は、罰金、公表などの罰則が予定されています。都は、個別のビルオーナーが未達にならないように、これを補完する仕組みとして、キャップアンドトレードという排出量取引の仕組みも構築しています。つまり、CO2削減量が不足するビルオーナーが、十分達成したビルオーナーからその余り分を買い取る仕組みです。
これらの規制は、原則建物の所有者に課せられるものですが、テナントもこれに協力する努力義務があります。
一方、中小規模事業所向けの制度として、上記制度とは別に、CO2排出量等を報告させる(規模により、報告が義務となる事業者と任意提出となる事業者あり)制度があります。都は、この制度に基づき提出されたデータをもとに、個別ビルのCO2排出量(総量および面積当たり単価)を都のHP上で公表しています。このページには誰でもアクセス可能で、事業所名(≒ビル名)や所在地、エリア、規模などで検索し個別ビルのCO2排出量を確認することができます。
これら個別データを、都が作成したベンチマーク(CO2排出量のビル全体の分布に基づき、その個別ビルのC02排出量がどの程度多いか少ないかがわかるよう示したもの)と比べれば、そのビルがどれだけ地球温暖化対策に貢献しているかがわかるのです。
ビルオーナーは、自分のビルのレベルがわかりますし、テナントは自分が入居するビルの選別に使えます。つまり、ビルオーナーは、CO2排出量に関し更に改善すべきなのか、そこそこ現状で頑張れているのかがわかります。テナントは、地球温暖化に問題意識を持ち実績のあがっているビルなのかどうかをこうしたデータで把握することにより、自社がそこに入居すべきかどうかを、CSRの視点あるいは電気料等のエネルギー使用料がより少なくなるかの視点の両方から判断できます。こうして、世の中の多くの建物がより環境に優しくなっていくことを目指した制度なのです。
下に、このデータにアクセスできる東京都HPのURLを書いておきますのでご興味のある方は一度覗いてみて下さい。
東京都環境局 地球温暖化対策報告書制度 個別事業所等検索システムのページ
このデータは、まだ、建物種類によるカテゴリーがなかったり、稼働状況が反映されていないなどの使いにくい部分があることは確かです。しかしながら、それらは個別に見ていけばある程度わかりますし、ビルオーナーが積極的に事情をアピールすれば足りることでもあります。多くの関係者がこの制度を知り、こうしたデータを有意義に活用されることを期待します。