65才引退時に本当に必要な老後資金は?

以前、このブログで、独身女性の65才時老後必要資金と、そのために40才から初めて蓄財を始めたときの毎月の必要積立金額について試算してみましたが、今回は、男性会社員が65才で引退する前提(妻は専業主婦)で、以降の夫婦二人の老後必要資金を引退時点でいくら用意していればよいかについてみてみましょう。

標準的な考え方としては、65才時点での夫婦各々の平均余命を出し(夫婦同年齢と単純化するケース多し)、男性が死亡するまでは夫婦の生活費として月20数万円程度(20万円〜25万円)を想定、男性死亡後は、妻の生活費としてその5〜8割程度を想定しまずは必要総額を算出します。その後、公的年金の平均的受給月額約22万円(夫婦二人存命の場合。妻だけの場合は金額は減る)の平均余命に基づく受給見込累積額と平均的な退職金約2,200万円(2,000〜2,500万円)を老後の収入とみなし、差し引きで、65才時点の必要資金を出すことが多いようです。

ここで、人の褌で相撲を取りますが(笑い)、最近、私が雑誌やファイナンシャルプランナーのHPでみたケースを採用してみます。細かい前提は省きます。ある有名週刊経済誌に載っていたケースをAとします。FPのHPのケースをBとします。
ケースAでは、必要総額1億1千万円弱、退職金や公的年金を控除した65才時の実際必要額は約1,400万円となっています。
ケースBでは、必要総額約9,700万円、同実際必要額約1,200万円です。

奇しくも、両者概ね同様の金額(1,200万円から1,400万円)となっています。
ちなみに、退職金について、ケースAでは2,200万円弱、ケースBでは2,500万円としていますので、いずれもほぼ大卒・大企業の男性を想定しています。

ここで、私から一つ茶々を入れてみます(笑い)。
ケースAでは、平均余命を超えるリスクを考慮し、平均より4年程度長生きすることを前提としているようです。この4年分は、換算すれば、何と2,400万円となります。これは二人ともある年齢で老人ホームに入る前提となっており、一人当たり月額25万円かかるものとして計算されているからです。ということは、平均余命までしか貯めなくて良いと割り切れば、1,000万円余裕がでる(=2,400万円ー1,400万円)ということです!

ケースBでは、住宅リフォーム資金や、趣味・レジャー費用、子供の結婚・住宅資金援助、車買い替え費用、予備費など、しめて2,500万円が上乗せされていました。ということは、そのあたりの贅沢資金は不要と割り切れば、1,300万円余裕がでる(=2,500万円ー1,200万円)ということです!

各ケースともちょっとした前提を一つ変えるだけで何と大きく数字が変わってしまうか、驚かれませんでしたか?
もちろん、各ケースとも前提は書かれており、ケースBではアクティブで充実した老後ライフを送るためにはという前提はありますが、読者やお客様をミスリードする可能性もあるでしょう。

上記で私が言いたいことは、そこそこ健康で慎ましい生活を送る前提では、各ケースで示された試算よりも、実際にはかなり資金に余裕が出るはずで貯蓄の必要性がないこともありうるということです。但し、大きな注意点がいくつかあります。

それは、上記各ケースでは、退職金は大卒・大企業のワーカーを想定しているということです。中小企業や、大企業でも退職金が少ない企業では、1千万円単位で収入が減少する点には注意が必要です。

また、試算上、月々必要な生活費として20数万円〜25万円程度の数字を置くケースがほとんどですが、これは、総務省の「家計調査報告」の「高齢夫婦無職世帯」の平均生活費か、あるいは生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」の「最低日常生活費」を採用することが多いようです。しかしながら、これらはあくまで平均値ですので、持ち家のある世帯とそうでない世帯が混ざっていたり、そもそもアンケートの回答者がどこまで住居費を含めているのかわからないようなデータなのです。
つまり、65才以降も貸家に住まなければならない夫婦は、その分、上記試算に家賃を加算しなければならないと考えた方がいいのです。

以上を、ざっくりとまとめますと、現在の年金制度が継続する限りにおいては、「大卒・大企業ワーカーで、65才の定年までに住宅ローンの支払いが済んでいる夫婦は、65才時点で全く貯蓄がなくとも、そこそこ健康で老後慎ましい生活を送る限り、1,000万円程度の資金の余裕がある」ということです。

これが単純なまとめとなりますが、一方で、それだけの退職金が出ない人や、自営業の方は、数千万円単位で大卒・大企業ワーカーとの違いが出てきます。
更に、公的年金の受給額も、大卒・大企業では上記想定よりも多く出るのが普通でしょうから、ここからも違いが生じます。
片や支出サイドでは逆に、引退前の元々の生活水準(生活費)の違いというのもあるので、同じように慎ましいと言っても、老後の慎ましい生活費の水準は元の生活水準の差に応じて大きく異なるでしょう。
また、自営業かどうかや勤めていた会社の規模等にかかわらず、65才以降も貸家に居住する場合は、前述の通り家賃の支払いが重くのしかかります。

いずれにせよ、世の中で公表されている試算というものには注意が必要です。メディアの性格上、上か下かどちらかにぶれる極端な試算が好まれるという事情もあるようです。読者はタイトルだけに目を留めることなく、中身もよく読んで理解することが必要です。

話があちこち飛びましたが、申し上げたいことは、雑誌などに載っている試算は、その性格上、特定の前提において成り立つだけですので、そのまま鵜呑みにすることなく、自分の具体的ケースにあてはめて一度試算してみることが重要です。
個々の具体的な状況にあてはめるとともに、「最低生活費」か「相応にゆとりのある生活費」か、どちらを目指すのかも前提の大きな要素となります。
試算を試みることは、老後の生活資金に対する理解にもつながりますし、今後の必要準備を明確にする第一歩となると思いますので、是非試みていただければと思います。

ややこしくなりますが、最後にもう一つ言えば、公的年金の将来の減額可能性や支給年齢の後ろ倒しも考えないといけなくなる可能性が高いということもあります。
6月17日の日経新聞には、年金のマクロ経済スライド実施により来年度から給付抑制なんていう記事が出ていました。これは、将来の減額可能性というよりも、すぐ足元に来ている現実的な給付抑制といえます。
ですので、上記では、余裕資金が出るケースがあると書きましたが、年金制度の変更も視野に入れると、もう少し保守的に見ておく必要がありますね。その他、大きく健康を害するケースでは医療費の水準によっては将来の家計を圧迫します。
いずれにしても、気になる方は、別途、自分なりに適切な前提を置いてシミュレーションするしかないのです。

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