東京都心部のオフィス空室率が順調に改善、賃料上昇は?
東京都心部のオフィス空室率が、順調に低下してきています。
CBREが3月5日に公表したデータによりますと、東京主要5区の2月のオフィス空室率は前月比0.2ポイント改善し5.4%となりました。昨年3月末の6.7%からは1.3ポイント改善しています。
三鬼商事が3月7日に発表したデータでは、東京主要5区の2月のオフィス空室率は前月比0.2 ポイント改善の7.0%となっています。同様に前年3月末との比較では、1.6ポイント改善しています。
三幸エステートは、まだ1月のデータまでしか公表していませんが、東京主要5区の大規模ビルの空室率は、1月時点で5.5%となっています。中旬に発表予定の2月データは、上記2社と同様に改善傾向を示すものと思われます。
本日の日経新聞の報道では、新築ビルのテナント入居状況も好調のようです。5月竣工予定のあの超大型の虎ノ門ヒルズが約80%で決定しているというのですから、テナントの需要自体は極めて堅調と言えるでしょう。もっとも、同ビルが竣工する月には全体の空室率は上昇する可能性が高いでしょう。
一方で、J-REITの指数が上がっていくには、オフィス賃料の上昇を見極めてからになるという投資家が多いと言われています。
上記仲介大手各社の平均募集賃料データを見る限りでは、明確に上昇しているとはまだ言えないようです。ただし、平均募集賃料はその集計対象となるオフィスビルのバスケットが毎期同じというわけではなく、またあくまでビルオーナーの募集のための公表賃料という性格上その動きが鈍いため、あまり信頼のおけるデータではありません。
だからと言って、成約賃料ベースの良いデータがあるかというと、公表されているのは、仲介営業マンが想定する賃料であったり、時系列比較が可能なように統計的に処理したデータで期ごとのブレが大きかったり、あまり使い勝手がよいものはないというのが実情です。
賃料に関して言いますと、オフィスビルも世の中の他の例と同じで、二極化しています。立地がよくスペックの高いオフィスビルにはオフィススペースを求める企業の需要も旺盛で、一部のビルにおいては既に相当前から賃料が上昇しているケースも見られます。そうでないビルは、多少賃料を下げたからといって空室が埋まらないビルも多く存在します。
ですので、成約賃料のデータを見るとしても、平均の賃料だけを見ていますと、二極化しているマーケットの実情がわからないままとなります。
空室率は、上記の通り複数の仲介会社で5%半ばまで低下してきています。5%というのは、不動産業界では、この水準を境に賃料が大きく動いていく水準と言われています。
今後、こうした需給の改善を受け、平均賃料もある程度上昇することを予想しますが、その上昇幅は大きくないと思っています。なぜなら、消費増税や地政学的リスク、世界的に成長力に力強さがない状況などから、日本経済の先行きにまだ各企業が大きな自信を持てそうにないこと、賃金上げの圧力が強い中、オフィスコストの上昇を許容する企業はまだ少ないと思われることを、その理由にあげておきたいと思います。
ただし、賃料データの裏では、一部の優良ビルの賃料の値上げが平均賃料上昇の幅を大きく超えて実現されているということには注目しておきましょう。
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