不動産の節税効果を減退させる動きが進んでいる?
下記ブログは、2025年12月2日 当社メールマガジンにて発信したものです。
はじめに
不動産を所有し賃貸することのメリットとしては、当たり前ですが、賃貸して収益を得られるという本質的なメリットがまず存在します。
これに加え、相続税の評価額を抑えることができるという、(本来的には)付随的なもののはずなのですが、その割には非常に大きなメリットもあることは、周知の事実です。
ところが、最近、この節税メリットを押さえ込もうとする動きが新たに生じています。
タワマンの高層階では、相場と大幅に乖離した相続税評価額になることが問題視され、2024年1月に、これへの対抗策として区分所有マンションの評価方法が改正・施行されたのは記憶に新しいですよね。
ただ、今回の話は、これとは別の新しい話となります。
111月13日の政府税制調査会に、国税庁が「財産評価を巡る諸問題」という説明資料を配布し、下記内容(同資料より抜粋。文章は原文まま。)の説明を行なったようです。
国税庁
-財産評価を巡る諸問題-
<現状>
・相続税においては、巷間、その節税と称して種々の相続対策が喧伝されており、
不動産や株式などの評価額を圧縮する租税回避等(スキーム)が広く利用されている状況
・近年、社会経済情勢の変化等に伴い、スキームの態様が多様化
<対応状況>
・スキームに対しては、これまで評価通達6項《この通達の定めにより難い場合の評価》に基づく課税処分を行うことなどにより個別に対応
<問題(評価通達6項と納税者の予見可能性)>
・近年、評価通達6項による評価に係る訴訟等が増加傾向にあり、こうした個別の対応について、納税者の予見可能性といった観点からの批判等があり、評価方法の明確化等が要請されている情勢
・他方、令和4年最高裁判決等を契機として、マンション通達を発出し、分譲マンション等の区分所有不動産の評価の適正化を図ったものの、依然として同通達が適用されない一棟所有の賃貸用マンションをはじめとする貸付用不動産を利用したスキームが散見されており、個別に対応せざるを得ない状況
-貸付用不動産の市場価格と通達評価額との関係-
・不動産市場における貸付用不動産の価額については、主に収益性によって価値判断が行われるため、一般的に貸家の稼働状況等が良好で、賃貸の割合が高くなると市場価格が高くなる
・一方、評価通達における貸付用不動産の価額については、借家人の支配権による制約等を考慮して評価するため、借家人がおり、賃貸の割合が高くなると通達評価額が低くなる
-相続税対策に係る問題-
・スキーム事例では、相続税対策を企図した駆け込み取得、物件の希少性等によって、高値で取引される傾向
・こうしたスキーム事例の中には、不動産会社や金融機関等から売買・借入などのあっせんを受け、貸付用不動産を購入後、貸室の稼働状況等が悪化し、借入金の返済等に窮する後継者がいることや、固定資産税等の納税が困難となるなど、相続税対策に関連した種々の問題が散見
ちなみに、この資料の中では3つの事例が紹介されている(筆者注)。
① 令和4年4月19日最高裁判決
② 相続開始の直前に一棟賃貸マンションの駆け込み取得を行なったケース
③ 不動産小口化商品の贈与により相続税対策を行なったケース
上記諸問題を受けての動き
上記で、「評価通達6項」というのは、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」というもので、国税庁の伝家の宝刀と言われています。
これが発動される事案が多くなってきているという現状認識をしているということです。
そのため、相続対策をした側から見れば、評価通達に基づいてスキームを考えたのに、相続が発生してから、伝家の宝刀で切り付けられて、評価通達の定めと違う評価をされてもかなわんわ、ということで訴訟が増えているという流れなのです。
国税としては、こうした訴訟や、納税者の予見可能性が乏しくなることを避けるため、事前にルールを明確にする、ただし、上記の諸問題を解消する方向(つまり相続税評価額を上げる方向)で改正する、という動きになっているのです。
上記の例で上がっている、賃貸物件と小口化商品が狙われているんだ、ということになります。
各種報道によると、次の案が出ているようです。
①賃貸物件については、相続発生の5年前以降に購入した物件については購入時の価格を基準としつつ、その8掛けで評価する。
②また、小口化商品については、購入時期にかかわらず、売買事例をもとに評価する。
今月中旬頃に発表される税制改正大綱にどのように盛り込まれるか、要注意です。
私見
税の問題に関し、課題があるから修正していくのは正しい方向だとは思いますが、個人的には次の大きな問題が生じるのではないかと思っています。
① 既に現行の評価通達に則ってスキームを組んだ購入者の中には、予想を遥かに大きく上回る計画相違が出て、逆に相続税支払い等が困難になる者が現れる可能性がある。
② 税の問題のみからすれば、こうした改正は止むを得ないのかもしれないが、不動産投資の大きな魅力を減退させてしまうことにより、官制の不動産価格調整が進まないか懸念される。
みなさんは、どうお考えになりますか?
(本日、2025.12.19に、与党(自民と維新)による「令和8年度税制改正大綱」が決定したとの報道が出ておりますので、上記を中心に不動産関連の主なものは、別途当社メルマガにて先行発信していく予定です。)


