経済書『テクノ封建制』と不動産

下記ブログは、2025年8月27日 当社メールマガジンにて発信したものです。


今回は、『テクノ封建制』という書籍のご紹介と、それに関連する不動産投資のよもやま話をしてみたいと思います。

まずは、『テクノ封建制』の内容をご紹介しましょう。

『テクノ封建制』概要
ヤニス・バルファキスの『テクノ封建制』(原題:Technofeudalism: What Killed Capitalism)は、現代の資本主義がすでに終焉し、新しい支配体制「テクノ封建制」に移行したと論じる挑発的な書です。従来の資本主義では、資本家が生産手段を所有し、労働者を雇い、利潤を追求する「市場競争」が経済の中心でした。しかし今日、アマゾン、グーグル、メタ、アップルなどの巨大デジタル・プラットフォーマーが「市場そのもの」を囲い込み、私的領域として支配するようになった、と著者は指摘します。

この体制では、ユーザーや企業はもはや自由な市場で取引しているのではなく、「デジタル領主」が管理する領域にアクセス権を与えられて活動しているにすぎません。プラットフォームが生み出す「クラウド資本」は、従来の工場や金融資本とは異なり、人々の行動データやネットワーク効果によって累積され、ほぼ無限に拡大します。そこでは利益よりも「アクセスの支配」が力の源泉となり、国家権力や金融市場さえも従属的な立場に置かれる危険がある、とバルファキスは強調します。

さらに著者は、アマゾンなどが「市場」ではなく「プラットフォーム封土」を運営し、参加者から「地代」のように収奪している状況を中世封建制になぞらえます。資本主義的な競争や価格形成は表面的に残っていても、実際には少数のテック企業が経済の流れを掌握し、グローバルな支配を強めているのです。

バルファキスは、この「テクノ封建制」が格差拡大や民主主義の弱体化をもたらすと警告しつつ、公共のデジタル・コモンズの構築や、分散型の所有・参加モデルを通じた対抗の必要性を訴えています。つまり本書は、「資本主義の次に来るもの」を考えるための現代批評であり、テクノロジーがもたらす権力構造の変容を鮮烈に描き出す一冊です。(以上、AI生成による概要)

よもやま話
いかがでしょうか? 私は、トランプ大統領の就任式に呼ばれた巨大テック企業トップの面々を想い出しつつ、なるほど、と思いました。

不動産に関しても、大量のデータを収集・保有でき、それらを何らかのコンテンツに組み換えることができればいいビジネスになることは想像しやすいですよね。また、プラットフォームに集約できるデータが大量であればあるほど、市場の囲い込みに成功しやすくなり独占的な利益が得られることも理解できます。

これを不動産ビジネスに当てはめて考えれば、最も近いところは、事例データを集めての不動産賃料・価格の査定・予想サービスとなるのではないでしょうか。もし不動産の賃貸事例、売買事例を際限なく集めることができれば、ある地点の標準的な地形の地価や、ある地点の標準的な建物の賃料などは即座に算出することが可能になります。更に、標準的なものでなくとも、特定の個別物件の価格や賃料も容易に算出できるでしょう。

但し、現状は、不動産の成約事例は取引当事者がどこかに提供する義務はなく、仲介会社も専任契約の場合のみレインズへの登録義務はありますが、それ以外は特段ありません。なお、レインズに集められたデータも、レインズ内で閉じているので公開性はありません。

現状では、民間企業が、自社が収集できる範囲で仕組みを作っているか、あるいは成約ではなく募集事例であれば、WEBをクロールすることで大量に取得できるので、コモディティデータと言えるマンション募集事例を集めて、価格や賃料を査定して結果を提供するということに止まっているようです。
国土交通省も強制的には成約事例を集めていませんし、不動産鑑定士が公示価格や基準地価格を評価する際に集めている成約事例データも、数が多くない上に、鑑定士協会内で閉じているので広がりはでてきません。

上記を鑑みると、不動産の成約ベースの事例データが、どこかの民間企業に独占的にかつ大量に集まるということはかなり想定しにくいと思われます。

また、Google検索やGmailやFacebookなど、一般の人々の一般の生活の中で、日々際限なく役にたつという性質を持つ無償ツールが不動産に関しては想定しにくいので、この点も、データ収集に難が出てくる要因かと思います。

可能性があるとすれば、民間企業やレインズ、役所などが大同団結して、成約事例をひと所に集め、それを半公共財として活用するという方法でしょうが、これも難しいでしょう。
また、そう出来た場合は、一民間企業が独占して優位に立つということはなくなります。

いずれにせよ、上記のような状況が続く限り、手前味噌ながら、まだ人間による物件の査定やコンサルティングの価値が極めて高いという状況は継続しそうです。



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