不動産の買主も仲介業者も十分注意すべき建築規制の調査不足
本日は、平成21年の東京地裁の判例で、第2種高度地区という建築に関する規制の内容を買主に告知しなかったこと(告知義務違反)で、売り主(宅建業者)と仲介業者(宅建業者)の両者に損害賠償責任が認められた事例をご紹介しましょう。
物件は、東京都内の土地建物でしたが、買主は既存建物を取り壊した上で、本件土地(面積約33㎡)上に面積100㎡程度の建物を建築することを希望しており、これを仲介業者に伝えていました。ところが、この土地は、第2種高度地区の規制にかかっており斜線制限の影響を受けることから、結果として100㎡の建物は建築できないことがわかりました。買主は、建築士にも確認していたようですが、建築士もこれを見逃したようです。
一方、仲介業者は、重要事項の説明(法律で定められている説明で、仲介業者が重要事項説明書という書面に基づき当事者に対して行わないといけない詳細な説明)の際に、本件土地が第2種高度地区の区域内にあることは説明しましたが、この規制の具体的な内容は説明せず資料の添付も行わなかったとのことです。
買主は、売り主と仲介業者に対し、損害賠償の訴訟を提起しました。ちなみに、建築士とは別途和解済みとなっています。
訴えられた業者は、第2種高度地区内にあることは説明している、買主は専門の建築士と相談している、そもそも100㎡の建物が建つという説明はしていない、加えて、売り主は100㎡の建物を建てるという建築計画自体聞かされていない、などの抗弁を行いました。
判決は、売り主(宅建業者)と仲介業者(宅建業者)の説明義務違反(債務不履行)を認定し、買主の損害賠償請求の一部を認めました。判決によれば、仲介業者は買主の希望を聞いていたのだから、規制の名称を告げるだけでなく買主の希望の建物が建築できないことを説明すべきであった、事前に規制を調査した上で案内の際に希望に添う建物が建築できないことを説明できたはずである、と仲介業者の説明義務違反の理由付けを行っています。また、宅建業者である売り主に対しては、他の宅建業者が仲介した場合でもこの説明義務を免除されない、売り主は重要事項説明に立ち会っていれば仲介業者の説明が不十分であることを認識することができたはずである(実際は別室で待機していた)として、同じく説明義務違反を認めました。
以下は、個人的な感想になりますが、仲介業者にここまでの確認と説明義務を負わすのは、特に買主が専門家たる建築士に相談していることを知っている場合には、酷のような気がします。実際にどのような建物が建つかということに関しては、図面を引ける建築士であれば容易にわかるとしても、現実問題として宅建主任レベルの知識でかつ常にそれをパーフェクトに覚えているわけでもない仲介業者にそこまで求めるのは酷ではないかということです。本件も、必ずしも業者側に悪意があったわけではなさそうです。
この判決からの帰結は、業者サイドについて言えば、仲介業者はよくよく気をつけて業務遂行することが必要であり、宅建主任試験レベルの内容は全てパーフェクトに実務で応用しないといけないということでしょうか(文章に書くと当たり前のことのように思えますが、現実問題としては全ての宅建業者・宅建主任にこれを求めるのは厳しいように思います)。これは、宅建業者のレベルを云々しているのではなく、上記判例からもわかる通り、専門家たる建築士だって間違えたことをもって言っているのです。
最後に、この件から不動産の買主サイドに対して何が言いたいのかと申しますと、次の通りとなります。
・判決で買主側の主張は認められたものの、損害賠償請求の一部のみであるし、訴訟コスト(費用・時間)もかかることになるので、買主自身で事前に十分納得のいく調査を行うべし(専門家への相談、委託を含む)
・仲介業者の説明は、悪意がなくても間違っていることもあるので、特に難しそうな事項に関してはそのまま真に受けず自身で調査等の対応を図るべし(専門家への相談、委託を含む)
・まとめますと、法的には、ケースにより専門家たる宅建業者が、種々、調査・説明すべきであることは論を待ちませんが、現実のリスクを考えますと、買主自体が十分自己防衛をしておくことが必要であるということですね。
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