■空き家対策法全面施行
5月26日、空き家対策法(空家等対策の推進に関する特別措置法)が全面施行されました。
この法律では、自治体が危険な空き家と判断すれば、空き家の所有者に修繕、除却などの是正措置を求めることができます。
もし所有者がこれに対応しない場合には、固定資産税の優遇を受けられなくなります。

■制度の具体的内容は?
制度の概要を見てみましょう。
まず、「空き家(法では空家等)」とは、居住その他の使用がなされていないことが常態であるものをいい、概ね1年間使用実績がない場合に該当します。
次に、危険な空き家である「特定空き家(法では特定空家等)」とは、 次の状態にある空き家をいいます。

1. 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
 例:建物の著しい傾斜、主要構造部分の損傷、屋根・外壁等が脱落・飛散の恐れ

2. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
 例:吹付け石綿の飛散可能性大、浄化槽の放置等による汚物の流出・臭気の発生、ゴミの放置等による臭気・ねずみ・ハエ等の発生

3. 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
 例:既存景観ルールへの著しい不適合、屋根・外壁等が汚物・落書き等で大きく傷んだり汚れたまま放置、多数の窓ガラスが割れたまま放置 

4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
 例:立木がはみ出し歩行者等の通行を妨害、空き家に住み着いた動物や虫が原因で地域住民の日常生活に支障

自治体が、空き家を上記の特定空き家と判断すると、除却、修繕、立木竹の伐採等の是正措置を、①助言又は指導、②勧告、③命令することが可能となります。
但し、自治体はあくまで上記の順番で全ての手順を踏んでいく必要があり、それぞれに相当の猶予期限を設ける必要があります。
上記②の勧告がなされた時に、初めて固定資産税の優遇措置(人の居住の用に供する家屋の敷地に適用される住宅用地特例*)が解除される(適用を受けられなくなる)のです。

注*)小規模住宅用宅地(200㎡以下の部分)6分の1に減額、一般住宅用地(200㎡超の部分)3分の1に減額

■不動産業者の業務PRに踊らされるな
ここで、あえて天邪鬼なことを申し上げます。
空き家対策法に関する各種メディアの記事や専門家のブログ、不動産業者の宣伝などでは、空き家所有者に対して修繕や売却、賃貸化あるいは定期点検サービスの利用などを勧めるものが多く見られます。
それはそれで結構なのですが、本当に急いでそうしたアクションを取らなければならないのかをよく考えて見ることが必要です。
そうした記事・ブログ・宣伝でアクションを取るべき主な理由とされているのは、固定資産税の住宅用地特例を受けられなくなるということのようです。

でも冷静に考えてみましょう。
この特例が解除されるには、まず自治体により「特定空き家」と判断されることが入り口になっています。
判断されたとしても、いきなり「勧告」がなされるのではなく、最初に「助言又は指導」がなされ、相当の猶予期限を経ても対応しない場合に初めて「勧告」がなされ、その時点で固定資産税の特例適用が解除されるのです。
上記で示した「特定空き家」に該当する条件、事例をみていただいたらわかると思いますが、これに該当する空き家は本当にひどい状態のまま放置されている空き家だけなのです。

「全国820万戸の空き家」、「固定資産税が6倍に跳ね上がる」などのセンセーショナルなフレーズが一人歩きし、多くの個人が影響を受け、さも大変であるかのような報道、執筆、宣伝がなされていますが、実際は違うのです。

■空き家対策法に対する個人の対応はどうあるべき?
では、空き家を保有する個人は、この空き家対策法にどのように対応すべきなのでしょうか?

1. 空き家が特定空き家に該当するかを、法律、指針、ガイドラインなどを参考に自分なりに判定する(比較的容易であるとは思うが、もし判定できない場合、疑義のある場合には自治体に相談)。

法令に関する参考URL   http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html

2. 特定空き家に該当しない場合(これが大部分です)は、当面、何もしなくても問題はない。
常識レベルで近隣に迷惑がかかっていなければ大丈夫であり、その状態を継続するだけの管理を行えば良い。あえて業者の定期点検サービスを受ける必要もない。但し、これを機に、自分が保有する資産ポートフォリオの点検・見直しを図り、必要に応じ利活用・売却などを検討すること自体には意味がある。また、相続予定の空き家であれば、相続対策の一環として何らかの対応をすることも同様に意義がある。但し、これらは、空き家対策法の施行に伴って行わないといけないという性格のものではない。

3. 特定空き家に該当する場合は、まずは、自治体に相談に行くことをお勧めする。
自治体では、制度上、相談窓口を作り相談体制を整備することが求められており、空き家所有者が積極的に相談することは相互の利益になるので歓迎されるはずであるし無料でもある。

4. 上記相談によりアドバイスされた諸対策や支援措置等を踏まえ、除却、修繕、売却、賃貸等のいずれの対策を採用するかを考えればよい。
この時点で、判断が難しければ専門家に相談すればよかろう。

最後に、特定空き家の所有者でなく、それよりも人数が圧倒的に多い危険な空き家の近隣に住む個人あるいは近隣に不動産を保有する個人の対応を示します。
これらの人は、生活上の不利益を被っているでしょうし、保有する資産の価値にも悪影響が及んでいるはずです。
今後、自治体は独自でも空き家の実態把握を行うことになりますが、近隣関係者として気になる空き家がある場合には、積極的に自治体に通報、情報の提供を行うべきです。
特定空き家として是正措置が取られ、最終的に解決する可能性が高まりますので、情報提供等により自己防衛を図るべきです。

なお、自治体の助言・指導、勧告、命令などは、不動産の抵当権者とは調整を行わずとも可能であるとされています。
金融機関でも個人・法人でも、特定空き家と判断される可能性のある不動産を担保にとっている場合は、抵当権者として物件の状況をよく確認し所有者と密にコミュニケーションを取っておくことが必要です。

 

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